映画「パラダイス・ネクスト」半野喜弘監督
2019年8月23日(金)F.A.E.P.単独インタビュー③

F:先ほどもお話しがありましたが、東京では撮れなかった、パリでは撮れなかった。台湾オールロケだったからこその一番の収穫って何でしょうか?

半野監督:やっぱり空気感ですね。ちょっとね、僕たちが生きてる場所に比べると自由な風が吹いてるイメージがあるんです。雨が降って濡れる・・・でも乾くよね?って。でもそれが東京だったら、雨が降った、すぐ濡れない所に入らないと!コンビニで傘を買わないと!ってなるじゃないですか?でも台湾はもうちょっと自然に近いっていうか。そのあるがまま的な空気感ってなかなか東京ではフイルムに映せないから、それが映せたっていうのは大きいかなって思います。というか、映したかったっていう感じかな。

© F.A.E.P.

F:逆に想定外だったことはありますか?

半野監督:映画には演出部というのがあって、今回は監督の下に助監督が5人ぐらいいました。1週間目の撮影が終わってそこで台北から花連に移動したんですけど、その1週間目の演出部の動きがイマイチだったんです。よし!じゃぁ、ちょうどロケ地も変わるし全員集合だ!って夜にダメ出ししたんですよ。そしたら翌日に僕以外の演出部が全員いなくなりました(笑)

F:花連に行ってからずっとですか?!

半野監督:そう!花連に行ってから、全体の7割ぐらいの撮影期間、助監督がいなかったんです。スタッフと俳優で60人もいるのに!

F:知識不足で申し訳ないんですが、助監督さんってそんなにいるんですね?どういう仕事になるんですか?

半野監督:例えばね、役者1人1人に僕が全部指示を出せないじゃないですか?それを助監督がやってくれたりとか、あと小道具の準備とか監督がこう言ってるから、こういうのを準備してくださいって指示を出したり。でもその助監督がいないから、数日したら通訳の人が段々とそうなってきて、最初は通訳で来てたのに仕方がないから「シーン63!ファーストテイクいきます!」とか、カチンコしてるんですよ(笑)
頼もしかったし、有り難かったです、助けられました。

F:それは想定外ですね(笑)

半野監督:それはまぁ、面白かったですね。僕は海外の仕事が長いのでそんなにビックリしなかったですけど、俳優さんたちは笑ってましたね。「聞いたことないよ、演出部が無い現場なんて。」って。

F:でもそういった環境だったから生まれた産物もありますよね?

半野監督:僕もそう思いますね。

半野監督:今回音楽もちょっと変わった使い方をしていて、僕は映画音楽がメインの仕事なんですが、映画音楽として割とダメだって言われている事をやってみようって。何故ならダメだって言われているけど本当にダメかどうか分かんないから。だから今回はわざと坂本龍一さんの曲以外は全て歌詞のある曲を使うと。しかも言語を全部バラバラにする。しょっぱなは台湾の民族音楽。でも実はこの言葉は台湾人が聞いても何を言っているか分からないんですよ。僕たちがアイヌの歌を聞いてもわからないみたいな。その次に流れるのがスペイン語、その後がマンダリン、そして英語。そういう風に言語が全くこの物語とリンクしてなくてもいいはずだと。リンクしていないといけないと映画学問的には過去言われていましたが(笑)その歪さというかバランスの悪さを個性にしたいと思いました。そんな中で、唯一1曲だけ、これが映画音楽なんだっていう曲を坂本龍一さんに書いていただいて。これは歌詞が無い曲にしたいと、でもアジアに合わせるとか台湾に合わせるとかって事は一切必要ないです、僕がほしいのがベルトルッチ(イタリアの映画監督)みたいな曲ですと。要するに最初見た時は「え?」と思うかもしれないけれど、もしかしたら何回も見てくださる方がいたら、この違和感が結構楽しいねっていう風なところまで持っていけるような耐久性のあるものにしたいなって事です。

© F.A.E.P.

F:ではキャストについてお伺いしたいんですが、まず我らが福岡出身の妻夫木さん。

半野監督:そうですよねぇ。

F:今回テンションの高い牧野という役で、でも背負っている何かの重さを時折見せる。そんな妻夫木さんの鏡に映った自分を見つめているシーンはすごかったと思うんですが。

半野監督:あれは素晴らしかったですね。あれもワンテイクです。冒頭の歩くシーンもワンテイク。本当に今回は2人ともに助けられたし、特に妻夫木君には本当に助けられたって気がします。色んな意味で、常に横についてくれていたのも彼だったし。

F:半野さんもこの映画の「共犯者だ」って表現されていましたよね?公開して4週間が経ちますが、その「共犯者」とは連絡を取り合っていますか?特に今日は福岡のプロモーション活動ですし。

半野監督:してますよ。頑張ってきてくれーって感じでした。

F:この映画自体が妻夫木さんとの食事会がきっかけで始まったと伺っています。だからでしょうか、妻夫木さんも思い入れが強い作品として感じているように思います。

半野監督:たぶん役としてのオファーを受けただけでなく立ち上げから一緒にやって、しかも当然こういう話で海外の撮影でって事で、難易度は高いじゃないですか?しかも恋愛モノでもなければ、謎解きモノでもない。そういう意味でいうと実現させることに本当に必死だったというか。それこそ豊川さんが舞台挨拶に登壇した時に言ったんだけど「僕は絶対に実現しないと思ってました。」って(笑)途中ね、そんな感じでしたよ、本当に。もうこれ無理だなっていうのが何十回もあったしね。

© F.A.E.P.

F:豊川さん演じる島は基本的にセリフが少ないですよね?でもシャオエンから声をかけられた時に見せた、一瞬泣きそうな表情はとても印象的でした。

半野監督:島という男はほとんど何も表情に出さずにたんたんとしているんですけど、でもあそこの顔と一番最後の一瞬の表情は大好きです。言葉も全く分からない中に日本人の俳優がポツンと2人だけいて。本当に役の2人みたいな事だったんですよ。異国にいるのは俺ら2人だけみたいな。

F:セリフ自体も少なかったですが、中国語も少しだけでしたね?冒頭のところとシャオエンと話すところだけ?

半野監督:そうですね、それぐらいですね。でも本当はね、もっとセリフがあったんです。極端にセリフが無いって事の方がキャラクターとしては面白いし、映画のエンターテインメント性は下がっちゃうかもしれないんですけれど、豊川悦司という俳優だって事を考えた時に何も話さないという事が成立するんじゃないかなって思ったんです。また彼は立ち姿というか全体のフォルムがすごく美しいので。色気があるっていうか・・・

F:牧野は全く中国語を話しませんよね?

半野監督:彼は要するにそういうタイプ、居るじゃないですか?

F:日本語で押し通すみたいな?

半野監督:そうそう。でも最初はシャオエンとのやり取りは英語でやるって脚本もあったんですが、台湾の人に聞いたら英語っていうよりも、台湾の女の子が日本語がちょっと分かるって事の方がリアルだって。

F:あーわかります。

半野監督:あーそうなんだーって事で、それで牧野の英語はなくなったんです。本人はその方がやりやすかったから嬉しかったみたい。でもまぁ、そこはそれでいいんじゃないかなって、こいつだったら相手に伝わらなくてもどんどん日本語で言うよねって。

F:Barに最初に入った時はそんな感じでしたね。

半野監督:大阪のおばちゃんであーゆー人いますよね!台湾とかでも日本語で「これこれこれ!」って(笑)

F:見ます、見ます(笑)

© F.A.E.P.

F:ニッキー・シエさんですが、実は以前「白色之恋」というドラマが日本で放送される際に、F.A.E.P.で単独インタビューをさせて頂いた事があるんです(http://faep-jp.com/?p=793)5年前になりますので、すごく大人になったなぁと思いました。

半野監督:今回シャオエンという役どころとしてはすごく難しいのは、彼女もまたバックボーンを全く描かないのでよく分からないんです。しかも途中から入ってきてって助走の時間もないじゃないですか?でも前半が台北のゴミゴミした中での男の話、花連という街に移って、花連の方が自然があるせいか僕にとって女性的なんです。だからここは女性が出てくるべきだろうということであの役になったんです。難しいオーダーを頑張ってやってくれたなって気がします。でも今回みんなそうですけどね、カイザーさんもそうです。彼は今回とても特殊な役だったんで面白い演技をしてくれました。

F:今回私自身は初めて彼の事を知ったんですけれど、映画を見てから普段の彼の姿を見るとすごく好青年で驚きました。

半野監督:すごい、いい奴なんですよ!全然あんな感じじゃないです(笑)

(インタビュー④に続く)

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