映画「パラダイス・ネクスト」半野喜弘監督
2019年8月23日(金)F.A.E.P.単独インタビュー②

F:映画のパンフレットも頂きましたが、パンフレットにも説明はあまりないですよね?

半野監督:そうですね、少しだけですね。当然、頭に入れるんですよ。何年何月どこそこで事件があって、でそこから何か月後・・・とか。でもそういうのも今回は全部やらない。もう全部やめようと。

© F.A.E.P.

F:もう、ここから徹底してるんですね。

半野監督:全部説明したら1回は納得してもらえる映画になると思うんですよ。でも果たしてもう1回見たいなって思える映画になるかどうかって別だと思っていて。でも、難しい問題です、本当に。

F:わかります。

半野監督:1回目は結構3割ぐらい腹立ったかもしれないけど、もう1回見たら腹立つのが2割ぐらいに減ってってね(笑)そういう繰り返し見れる映画にしたいなら、あんまり「この謎解きがここでこうで」とか「わぁ!」って驚くような感じじゃなくて、じわーっとしみ込むような感じの映画の方が何回も見れるじゃないかって思いがあってこういう映画になりました。そうなってると嬉しいのですが・・・。

F:確かに何度も見たくなります。

半野監督:そういう映画の方が僕たちが作りたかったものに近いんです。台湾って元々そういう映画があったという事ももちろんあるんですけど、そういうちょっとダラッとした空気感に向いている場所だという気がするんです。でも場所に魅力があったり、光に魅力があったり、熱気があったり、ものすごく人が生きるパワーがあったりするから、何となく引き寄せられてしまう何かがあって。 やっぱりそれは東京で物語を語るとか、パリで物語を語るとかいうのとはずいぶん違う何かがあるような気がしています。 理不尽さとか予定が予定調和にならないところとか台湾らしいんじゃないかって気が、僕は勝手に思ったりしてるんです。

F: ウォン・カーウァイ作品とかの昔からの台湾や香港、中国の映画の雰囲気ですよね。話の主軸というより、その映画の雰囲気というか、空気感というか、何度でも繰り返し見たくなる感じです。

半野監督:僕は、それも1つの映画の在り方だと思っていて、だからってそれがいいんだって事では決してなくて、そういう映画もあってもいいんじゃない?って感じなんですよ。

© F.A.E.P.

F:私が映画監督さんのインタビューは半野さんが2人目で、以前は台湾の女性監督のゼロ・チョウ監督にお話しをお伺いしたことがあるんですが。

半野監督:あぁ!

F:ゼロ・チョウ監督の作品も空気感や色がとても特徴的なんですが、「パラダイス・ネクスト」にもそういった色をたくさん感じる部分がありました。寺院の赤だったり、花連の緑だったり。

半野監督:そうですねぇ。

F:あと・・・意図的だったんでしょうか?車の色がブルーだったんですが、冒頭で牧野が手にした傘の色もブルーでしたよね?

半野監督:そうです、そうです。あれは要するに牧野が一旦手にして、次に手から離してしまうのが傘であって、後半ではあの車、そして女性の存在もそうだと言えます。でも人生ってそういうもんじゃないですか?僕の中で冒頭での“牧野がどこからか逃げ出し、通りを歩いて最後笑ってアップになるカット“、あそこまでがこの映画の中で描く彼の人生と同じっていうか。人にぶつかって迷惑かけちゃったり、なんかモノを1個取ってみたり、それがこれじゃなかったって捨てたり、それを誰かが拾ったり、で、最後は笑ってるって。それがこの映画の彼の役割と同じことで、それを一番冒頭のシーンでやりたいって思ったんです。

F:正直1度目の鑑賞の時は気づかなかったんです。2度目で気が付きました。

半野監督:あれはその場で何か足らないって思って、たまたまあの傘を見つけたんです。

F:オープニングのシーンといえば、島と牧野の出会いのシーン。豊川さんの島の沈黙のシーンが5分ぐらいあったんですよね?

半野監督:本当はもっとちゃんと撮ったテイクがあるんですよ。でも、あのテイクが一番面白かったんです。

F:それにこのシーンはパンフレットやチラシ、HPにも使われていますが、表情が本編と違いますよね?

半野監督:笑ってるでしょ?

F:はい!これは映画を見た人からすると泣けます。これはオフショットですよね?

半野監督:そうですね、オフです。実際にそんなシーンないですもんねぇ。

F:この写真を使うのはズルいです。

半野監督:ははははっ(笑)いやでも、まぁ、本当にこの2人って日本の役者でスターと言われる人じゃないですか?でも今回僕たちがやったことって、スターの俳優と会社的な映画を作るって事じゃなくて、すごく能力のある人たちで自主映画をやったって感じなんです。だからそういうバカな事も許されたっていう。

F:妻夫木さんも豊川さんもたくさんの作品に出ていますが、またちょっと違う雰囲気でしたよね?
若いっていうか?

半野監督:自由な感じだったでしょ?

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F:このロケ地は行天宮の近くですよね?私も個人的に何度か台湾に行ってるんですが、例えば圓山大飯店とか台湾好きにはツボなシーンが多かったと思うんですが?

半野監督:いや!ここのね、牛肉麺ね、僕が知りうる限り台湾で一番美味しいです!

F:えーー!本当ですか?

半野監督:ロケに使う予定じゃなくて。僕とカメラマンとロケ地を探してて、食べたらすっごくおいしかったんですよ。で、3~4回通って撮影させてくれって口説いたんです。

F:えぇーそれは是非次回行ってみたいと思います。

半野監督:ロケ地のMAPとか出てるから行けますよ。

F:あとテーブルの上の調味料とかむき出しのティッシュとか、そういう細かい所もこだわっていましたよね?他にも檳榔だとか、夏なのにやかんでお湯がシュンシュン沸いているところとか。

半野監督:今回スタッフがカメラマン以外ほぼ全員台湾人だし、顧問というか相談役として余さんというエドワード・ヤンのプロデューサーをやっていた方が入ってくれてたので、何かあった時は余さんに聞いていたんです。
例えば台湾人が見てもおかしくないような中国語にしたいと、その時にヤクザっていうのはこの世代は外省人なのか内省人なのかにもよるけども、どこをマンダリンにして、どの部分を台湾語にするというバランスがあると。その辺はわりと向こうの人にお願いしてやってもらって。僕は監督ですけど中国語のセリフのOKに関してはやっぱり20%ぐらいしか分からないんですよ。雰囲気しかわからないから。だからそういう時はちゃんと横にそれが分かる人がいて、その人に「今の中国語は問題なかった?カメラも良かった、芝居も良かった、動きも良かった、表情も良かった、あとはセリフだけなんだけど?」って聞いて、それで「語尾がちょっと・・・。」って言われると、よし!撮りなおそう!ってやってましたね。

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F:食事をしているシーンも多かったように感じましたが?

半野監督:そうですね。食べるって事は特に台湾っていう国においては、日々の暮らしから切り離せないっていうか、朝から外食しちゃう人たちですからね。だから自然と必要になってくるんです。でも後半は食事のシーンが無いんですよね。

F:だからですかね、何か後半は生きるという活力みたいなものが薄いように感じてしまうのは。

半野監督:だんだんと精神世界的なね。そういう話では全然ないんですけど、そうなっていくというか、ちょっと色んな輪郭がぼけていくような感じがしますよね。

(インタビュー③に続く)

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